出願審査の請求

 特許の出願手続では、権利を取得したい技術範囲を示す書類(特許請求の範囲)とともに、特許請求の範囲に記載された発明を詳細に説明した書類(明細書)や図面を作成し、これらを願書に添付して特許庁に提出します。

 しかし、この手続だけでは、提出した書類を審査してもらうことはできません。別途、特許出願の日から3年以内に、出願審査請求という手続をする必要があります。


 出願時に提出した書類は、審査請求の手続をすることによって、はじめて審査の順番待ちの列に加えられます。つまり、早く審査をしてもらいたい場合には、できるだけ早く審査請求手続を行う必要があるのです。
 また、審査請求の期限は、自ら管理しなければなりません。国(特許庁)から「そろそろ審査請求の期限が来ますよ」といった通知がされることは、いっさいありません。期限までに審査請求をしなかった出願は取り下げたものとみなされ、特許を受けることはおろか、審査を受けることも不可能になります。

 
 ちなみに、特許権をはじめとする産業財産権の登録料の納付や商標権の更新の申請手続の期限に関しても、国から期限を通知してくれることはなく、自分でしっかりと管理する必要があります。ここが税金や年金などとは違うところですね。

 
 出願と同時、または出願から速やかに審査請求の手続をすることによって、短期間で特許を取得することができる場合があります。さらに、早期審査という制度を利用して、通常の審査の順番を飛び越えて審査をしてもらうと、出願から1年も経たないうちに特許が付与される場合もあります。


 ただし、審査が早期に開始されると、早期に拒絶を受けてしまう可能性があることも、考慮しなければなりません。また、審査請求手続の手数料(特許庁に納付するもの)はかなり高額になります(2015年5月現在では12万2千円以上)ので、このコスト負担に対応できるかどうかも問題となります。また市場でのニーズが高い製品であるかどうか、発明に改良の余地があるかなども、判断の材料となります。


 このように、発明の重要度合いや実施の状況、特許を受ける可能性の度合い、費用負担などを考慮して、いつ審査請求の手続をするかを検討する必要があります。さらに、防衛的な目的で行った特許出願に関しては審査請求はしないという選択肢や、費用対効果を考慮して実用新案への変更により維持し続けるという選択肢を含めて検討する必要があります。